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水墨画のポイント

 

席画での講話

文房四宝()

写意画と工筆画

人物画への誘い

 

 

 

過去に情報誌『墨美』で連載されたものです。

 

人物画への誘い

人物は最も難しいが、易しくもある

 肖像として描くのは最も難しい。いくらそっくりに描いても喜ばれることはない。モデルの人格、性格、精神を宿すのは至難である。生活感を出すために、点景として描くのは難しくない。肖像としてでなく描く人物画は多少のデッサンをすれば、決して難しくない。基本的な骨格、長さ、厚みのバランス、動きなどは、自分自身が人物なのだから、自分の体形、動作、表情を探っていけば研究は容易である。

 西洋画では人物画の基礎として、鏡に自分を映して自画像を描くことをよくした。自画像は顔の骨格、表情、眼に宿る精神の研究には非常に役立つ。

また、人物画の基礎として、西洋画では石膏デッサンをするのが常識で、日本の美術学校でもいまだに重視しているようだ。しかしそれは西洋画の基礎であって、墨絵の基礎には必ずしも必要でない。

 

墨の人物画は昔から線描き

 葛飾北斎と渡辺崋山の人物画を参考にあげる。このように一筆のタッチで描いていくのが特徴で、西洋画とは全く違う。エンピツやペンのデッサンとは共通だが、墨筆の線は作者の感情移入ができ、誇張、強調が容易にできる。動作を線だけで表せる。濃淡や滲みかすれの墨の味わいは、一筆描きでも芸術性に近づける。『北斎人物漫画』『一掃百態図』が不滅であるゆえんである。

墨は黒でない、まして陰の色でない

 墨はすみ色で黒でない。なぜか平気で陰に使う人が多いが、これは間違っている。墨の絵は明暗で描く絵画ではない。北斎、崋山の人物を見ても、陰など入れていない。

 墨の人物画は、日本、中国とも同じ特徴を持つ。闊達に筆を揮い、自然に誇張が働くと、漫画的になる。墨の人物の最高は漫画であるといわれ、最高の一つが平安末期の『鳥獣戯画』である。

 

明暗で描くのは西洋画、水墨画は線の技術

 水墨画は本来、明暗で描くものではない。西洋画が入ってきた江戸初期にも、その後も、日本の墨の絵は明暗で描くことを拒否してきた。江戸中期に写生派を確立した円山応挙でさえ、陰影をつけることをしていない。下って明治時代になっても、陰影をつけることをしていない。西洋画の好きな量感や立体感の表現も線一本で表現できたからだ。やたら陰影をつけて汚してしまうようになったのは、昭和期も戦後になってからか。日本の美術教育はいつからか狂ってしまって、絵画は明暗で描くものと教えてしまった。洋画は明暗で描くが、墨の絵は違うことを教えなかったばかりか、墨絵の指導をはずしてしまったから、いまや、墨絵の基本が失われ、やたらに陰影をつけたがる人が増えて、水彩画法で描く墨絵が大流行し、誰も不思議に思わない。明暗で描くのは西洋画、明暗を無視して、立体感、量感、遠近感までも線のちから(呼吸)で表現するのが墨の絵である。洋画法優先主義に陥ってはならない。

 

西洋画法応用の人物

明暗を使わない日本画

線優先の中国画

線描のみの中国画

                         情報誌『墨美』 2006葉月(3)2006神無月(4)から

 

 

 

 

 

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