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席画での講話

文房四宝()

写意画と工筆画

人物画への誘い

 

 

 

   文房四宝

 中国の文人が書斎(文房)で用いる道具のうち、筆・墨・硯・紙4種をいい、文房具愛玩の歴史は漢・魏・晋代までさかのぼり、10世紀五代のころ書斎がはっきりした形をとるにつれて盛んになった。特に南唐の李U(りいく)がつくらせた李廷珪墨、南唐官硯、澄心堂紙、呉伯玄筆は「徽州(きしゅう)四宝」と呼ばれて珍重され、文房具の歴史の基礎を築いた。(日本大百科全書から)

 

墨の歴史

古代中国の甲骨文に墨書や朱墨の跡が発見されており、秦の墓から石硯・磨石とともにでた墨が確認される最古のものである。漢代には丸めた形状に作られ墨丸と呼ばれた。国内では初めて奈良和束の松煙墨「南都油煙墨」が作られた。

比較

 

和墨(日本墨)

唐墨(中国墨)

概要

唐墨より墨の寿命が比較的短いといわれるが、昭和40年代以降製墨技術の向上により唐墨以上の製品となっている。唐墨と和墨の違いは膠の粘度、煤と膠の配合比率などに違いがあるといわれる。

奈良(国内約95)鈴鹿(伝統的工芸品)が二大産地である。

古墨に対して良い評価、時間とともに墨色に厚み味わいが出てくるのが特長。文化大革命以後、製墨技術が廃れ、現代の評価は良くない。

古来、安徽省屯渓市が主たる墨の生産地である(徽墨)

墨の色

黒々として素朴、品位と深みに乏しい

白味を帯びた黒色で素朴さに欠けるが、品位と深みを備える。やや茶味の墨色

力強さ

割れにくい

割れやすい、ものによっては頻繁(日本の気候との不具合も影響)

伸び

伸びが悪い、墨を枯れさせる必要あり

伸びが良い

にじみ

にじみが悪く、墨が紙に浸透しにくいため枯れた紙が必要

にじみが美しい、墨が紙によく浸透する

寿命

短めで約1050

寿命が長い

膠の量

煙煤と高粘度の膠10:(68)

墨のおりが早く黒味が強く粘り気が強く感じる

煙煤と低粘度の膠10:(1012)

墨味が出にくい反面粘り気が弱く感じる

墨の種類

比較

 

油煙墨

松煙墨

材料

植物性油(菜種油、胡麻油、大豆油、綿実油、桐油、椿油など)

鉱物性油(重油、軽油、灯油など)

松の幹(樹脂)、松の根

純度

油を燃焼させて煤(すす)を採取するため不純物が少なく、炭素粒子が松煙墨に比べ非常に小さいので墨色に純度がある

粒子径 菜種油手焚き1550ナノメーター

松の木片を燃焼させて煤を採取するため不純物が混じり、炭素粒子は油煙墨より大きく墨色は複雑である

粒子径 松の根直火焚き20300ナノメーター

量感

墨色の厚みが少ない

墨色は複雑である

色調

赤茶味のある強い感じで、淡墨より濃墨のほうが向いている

濃くすると艶がなくざらざらとした感じになるので、主に淡墨にして用いられる

光沢

墨色の光沢がよく上品にみえる

硯の磨墨面は艶やかに輝く

光沢がなく、光を吸収し黒さが増す

磨墨面は沈んだ黒色

墨色の変化

年代による墨色の変化の幅が少ない。枯れて古くなると厚みがでて、重量感のある名墨は油煙墨に多い。

艶やかさはないが深く重厚な味わいがある。10年以上経ったものは自然と青みが帯びてくるので「青墨(せいぼく)と呼ぶ

膠(にかわ)

動物の骨や皮、腱などから抽出した膠状物質。高級なものでは鹿、通常は牛や豚、羊、兎など。膠は動物性蛋白質であるため、極端な低温下では粘性が増しゲル化ゼリー状になり書作に適さない。おおよそ水温18℃以下でゲル化する。

膠は腐敗しやすいため、冬期しか墨が製造できない理由がここにある。

香料

膠の匂いを消すためと気持ちを落ち着かせるために使用する。天然香料のほか、合成香料(梅花、麝香など)、龍脳が普及している。

墨のサイズ

■和墨

15を「1」としてその何倍かで表す。2丁型(30g)、3丁型(45g)、5丁型(75g)、半丁型から20丁型くらいまでの大きさがある。

■唐墨

1600を基準に何分の一かで表す。その1/22丁型(300g)、1/44丁型(150g)、1/8を8丁型(75g)という。

色合い

色合いの基準は菜種油の油煙墨の淡墨の色を茶系、これより赤く感じるものを赤系、青く感じるものを紫紺系青系に分類している。細かい粒子のみは赤系、少し大きな粒子が混じると茶系、さらに紫紺系、大きな粒子になると青系といえる。最近では人工的に顔料を加えて製造する。「天然藍」を使った青墨がある。

固形墨と液体墨

固形墨

硯で固形墨を磨ると硯それぞれの鋒鋩の持ち味により変化(分散)し、粒子径の幅の広いものとなる。鋒鋩(ほうぼう)には必ず粗密があり、その鋒鋩が作り出す粒子径を中心として、細かいものから荒いものまで幅広い粒子の存在する磨墨液(分散液)は、濃い時には重厚さを、淡墨の時には立体感を表現する。新墨では水温18℃前後以下で急激に粘度が増加、ゼリー状に固まるので、冬季などは一般的に20℃以上の水温が必要である。

液体墨

工場で製造した時の分散状態が基準となり、かつ、液の分散を良くするために、粒子径の揃った原料を使うので、濃い時にはやや重厚さに欠け、淡墨にはやや平面的になる。時間の経過とともに少しずつ凝集沈殿が起こり、この傾向は益々進む。低温になれば多少粘度は高くなるが、冬季屋外での揮毫は液体墨が適している。

墨の擦り方

墨は「墨の重さで磨れ」といわれ、余計な力を加えずに気長に。淡墨であっても墨はトロトロになるまで濃く磨る。濃く磨ることは磨墨液の粒子分布の幅を広げ、淡墨における冴え・立体感を表現するために大切である。細かく磨墨した液は筆跡と滲みの濃さの差が少なく明るい色調となり、粗く磨墨した液は筆跡と滲みの差がはっきりした濁りのある暗い色調となる。墨には軟水(硬度2060)が良く、煤粒子の分散しやすく滑らかな書き味が得られる。

水は数滴ずつ硯の丘に垂らして、十分に濃くなったら池に流し込み、新たに数滴水を垂らして磨ることを繰り返す。

古墨

製造直後の新墨は膠の成分が良く効いているため筆跡と滲みがあまりはっきりしない傾向がある。墨は「煤と膠と水」で造られ、新墨ではその体内に水分が20%近く含まれ、保存環境にも影響されるが製造後35年経てば一定となる。長い年月が経過すると、加水分解による膠の粘度低下が進み、煤を分散させる力も弱まり、膠の重さが減ってくる。この場合筆跡がしっかり残り透明感のある滲みに変化してくるとともに運筆も軽やかで濃墨でも書き易くなる。言い換えれば墨の枯れとは、自然界における蛋白質(膠)の分解の過程である。

墨の保管

磨墨後は直ちに反古紙や柔らかい布で水分を拭き取り、なるべく風通しの良いところ、温度変化の少ないところに保管する。ティッシュペーパーは紙の細かい繊維がこびりつくのでお勧めできない。長期に保管する場合は、桐の箱に入れておくのが最善で、ビニールや密閉容器ではカビの発生を、直射日光はひび割れの原因となるので避ける。

資料提供 : 「墨雲堂」ホームページ、可成屋「書画の娯しみ」、芸術新聞社「墨スペシャル26号」

 

 

 

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