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◆ 文房四宝 中国の文人が書斎(文房)で用いる道具のうち、筆・墨・硯・紙の4種をいい、文房具愛玩の歴史は漢・魏・晋代までさかのぼり、10世紀五代のころ書斎がはっきりした形をとるにつれて盛んになった。特に南唐の李U(りいく)がつくらせた李廷珪墨、南唐官硯、澄心堂紙、呉伯玄筆は「徽州(きしゅう)四宝」と呼ばれて珍重され、文房具の歴史の基礎を築いた。(日本大百科全書から) |
◆硯の起源 西周の墓から長方形の石板調色器が出土している。顔料をのせ研磨具ですりつぶすための石版で、硯の前身と思われる。硯の最古の出土は秦代の磨石を伴った素朴な石硯である。前漢代には次第に硯の形が扁平な円形に整えられ、後漢には彫刻された蓋や三本足がついたり、陶磁製が現れたり、かなり人工的な硯になる。唐代のころに端渓硯、歙州硯も採掘された。 日本では平安時代あたりまで陶磁硯が使われたようだ。 |
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◆鋒鋩(ほうぼう) 墨が早く磨れるためには鋒鋩の良いものが望まれる。鋒鋩は硯石に含まれる石英・銅・鉄などの小さな結晶で、これが墨を磨る際におろし金のような役割を果たす。鋒鋩があまり粗く、たくさんありすぎると墨が早くおりる代わりにドロリとなる。反対に鋒鋩が細かすぎると、いつまで磨っても墨がおりず、艶やかな墨色が出ない。 |
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◆端渓硯(たんけいけん)
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◆歙州硯(きゅうじゅうけん)
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◆澄泥硯(ちょうでいけん)
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◆洮河緑石硯(とうがろくせきけん)
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◆雄勝(おがつ)硯
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◆赤間硯
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◆那智黒石(なちぐろいし)硯
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◆雨畑(あめはた)硯
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◆呼称 ■形での呼び方 ・長方硯 ・・・・ 最も一般的な形 ・円硯/・方硯 ・・・・ 円形/正方形の硯 ・六稜硯 ・・・・ 六角形の硯 ・八稜硯 ・・・・ 八角形の硯 ・板硯 ・・・・ 池のない板状の硯 ・太史硯 ・・・・ 高さ10cmくらいの長方形で、硯裏を左右残して削り取った硯 |
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◆硯のサイズ ■和硯 「五三寸」(幅三寸×長五寸、約90×150cm)、「小四六」(約106×167cm)、「大四六」(約120×180cm)など。 ■唐硯 硯の大きさは「縦の長さ」吋(インチ)で表す。1吋は2.5cm。長方硯の縦対横の比率は3対2、8吋の硯は縦が20cm、横13cmくらいとなる。 |
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◆墨と硯の相性 一例として油煙墨は煤の粒子が細かく均一なので、鋒鋩の細かい端渓硯に適し、粒子が大きく不均一な松煙墨は、鋒鋩が鋭く粗めの歙州硯や澄泥硯に相性が良いといえる。 |
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◆硯の取扱い ■メンテナンス 使い終わったらその都度、水かぬるま湯でよく洗い、墨のカスを落とす。余分なカスが残ると次に使うとき発墨が悪い。水気を拭き取り、日陰で乾かす。 ■泥砥石 長く使っているうちに鋒鋩が磨減して墨おりが悪くなる。鋒鋩が磨減した硯は、硯面が光って見え、指で触ると滑るような感覚になる。硯専用の泥砥石を使い、墨堂(硯の岡)に少量の水を垂らし、円を描くように研ぐ。砥石は小さいもので研ぐ面を平たくし力を入れすぎないことがポイント。研ぎ、水洗い、拭き取り、乾燥後の硯墨堂が白く見え、指でさすると吸いつくような感触となって鋒鋩が立つ。 |
資料提供 : 各硯製造者ホームページ、可成屋「書画の娯しみ」、芸術新聞社「墨スペシャル26号」